恭也大学一年、全ルート制覇、恋人なしのご都合設定です

 

 

「ふむ・・・」

 

唐突だが、彼─高町恭也─の朝は早い

日課にしている早朝鍛錬の為なのだが、高町家の誰よりも早く起きだす

そして、今朝もいつものように目が覚め

鍛錬の支度をしようと布団から起き上がると・・・違和感を感じた

 

部屋はいつもの風景と変わりはない

しかし、何故かいつもよりも低い所に視界が固定されているのだ

 

(なのはと目線を合わせた時とほぼ同じくらいか・・・)

 

その視点の高さにはよく身に覚えがあるのか、恭也はそう考えた

 

(しかし、俺はきちんと立っているはずだよな?)

 

恭也の違和感の正体はコレである

自分がきちんと立っていると認識しているのにもかかわらず

なのはと同じくらいの視点の高さ、という事である

 

(・・・と言うことは・・・まさか・・・)

 

恭也はそこから導き出された結論を確認する為に

恐る恐る─自分の考えが間違いである事を祈りつつ─自分の身体に視線を落とした

 

(・・・・・・・・・はぁ)

 

恭也の視界にまず飛び込んできた物は・・・自分の寝巻きだった

サイズがかなり大きいのか

手は袖に隠れ、裾は膝くらいまであり、下はずり落ちている状態だった

そうして、恭也は確信した

 

(・・・俺の身体が・・・縮んだ・・・)

 

と言う事を・・・

 

 

 

 

恭也が自分の状況をそう結論付けるのと、美由希の気配が部屋に近づいて来ていた

恭也が時間を確認すると、既に鍛錬の時刻を過ぎていた

どうやら時間になっても来ない恭也を心配したのか、様子を見に来たようだ

 

(まずいな・・・)

 

別に恭也はこの状況を秘密にしたい訳でもない

確かに元に戻るまで隠し通せれば無用な混乱は避けられるだろうが

具体的な解決策が思い浮かばない以上、隠し通すのは不可能だと考えたからだ

ましてや、一緒に住んでいる家族である

そうである以上、隠し通そうとしても何処かしらで無理が生じ、いずれはボロが出る

ならば、秘密にするよりもいっその事話してしまった方が気が楽になるし

元に戻る方法も見つかりやすいだろう

 

しかし、『今』この状況を美由希に見せるわけにはいかないのも事実だ

美由希とは長い付き合いだ─高町家の誰よりも・・・

その為・・・でもないが、恭也にはこの状況を見た美由紀の反応が

手に取るように想像できる

 

(・・・大声を出して驚くだろうしな・・・)

 

恭也が『今』美由希に見せる事を躊躇う理由がコレである

さすがに陽が昇りきっていない早朝に大声を出させるわけにはいかない

家族が起き出すだろうし、何よりも近所迷惑だからだ

 

(・・・となると、するべき事は一つ・・・早々に黙らせる)

 

恭也はそう結論付けると気配を殺して襖の近くに潜む

そんな事とは露知らず、美由紀は何時ものように恭也の部屋に侵入した

 

「恭ちゃん、もう鍛錬の時間だよ」

「いつも言っているだろう!この馬鹿弟子が!

 『勝手に人の部屋に入ってくるな、部屋に入る時は主の許可を取ってから入れ』

 ・・・と」

 

恭也は美由希の行動に律儀にもツッコミを入れながら

八景の柄で美由希の鳩尾─横隔膜─を突き上げるように強打する

突然の攻撃に美由希は反応も出来ずにマトモに受ける

当然美由希は、痛みと呼吸困難で立ち続ける事が出来ずにその場に膝を着く

そして、恭也は丁度いい高さになった美由希の首筋に止めの一撃を見舞った

結局美由希は何も分からないまま意識を失った

 

(情けない・・・御神の剣士ともあろう者がこうも簡単に奇襲を許し

 あまつさえ意識を失い無力化させられるとは・・・

 これは鍛錬を厳しくしなければな・・・)

 

弟子に対しては何処までも非情な師匠であった

 

 

 

(さてと、かーさんは起きているかな?)

 

美由希を鋼糸で縛り上げ、猿轡を噛ませ、庭に放置してきた恭也は

まずは一家の大黒柱でもある桃子に事情を説明する事にした

 

「かーさん、起きているか?」

「あら?恭也?珍しいわね」

 

恭也が扉を軽く叩きながら尋ねると、部屋の中から

意外・・・といった感じで起きていた桃子はそう返事をした

 

「少し話があるのだが、構わないか?」

「ホントに珍しいわね・・・別に構わないわよ」

「かなり驚くと思うが、あまり大きな声は出さないで欲しい」

「?どういうこと?」

 

恭也は桃子の疑問に答えるかのように扉を開き部屋の中に入る

部屋に入ってきた恭也を見た瞬間、桃子は意識が飛び

次いで、恭也の忠告を無視したかのように声を張り上げようとしたが・・・

 

「ちょ・・・モガモガ・・・(っと!恭也!何で小さくなっているの!!)」

「かーさん、みんなが起きるからあまり大きな声を出すのは止めてくれ

 それに、近所迷惑にもなるから」

 

それを予測していた恭也が桃子の口を塞いだ事によって未然に防がれた

 

「かーさん、落ち着いたか?」

「(コクコク)」

 

恭也は桃子が落ち着いたの事を確認すると口を塞いでいた手を離し

朝、目が覚めてからの事、自分が考えている事等をかいつまんで話した

・・・当然、美由希の事については話さなかった

 

「・・・と、言うわけなんだが・・・」

「・・・はぁ〜、それで、恭也はどうするの?」

 

恭也の説明に桃子はため息を吐きながら、これから恭也がどうするのかを聞く

普通ならば信じられないような事柄なのだが、慣れとは恐ろしいものである

既に桃子は、恭也が小さくなった・・・と言う事実を受け入れている

 

「とりあえず、朝食の時にでもみんなに言おうと思っている

 ・・・隠し通せるとも思えないしな」

「そうね・・・いつ元に戻れるか分からない以上話した方がいいわね」

「それで、かーさんには一足先にみんなに言っておいて欲しいんだが・・・

 俺がいきなりみんなの前に姿を現すよりも幾分落ち着けると思うから」

「まあ、それが妥当な所でしょうね

 みんなからは私の方から話しておくわ」

 

桃子は恭也の提案を受け入れると腰を上げる

 

「それじゃあ、私はそろそろ仕込みに行かないと」

「ああ、すまなかったな、かーさん

 朝の貴重な時間を割いてもらって」

「気にしないでいいわよ、恭也、 息子の一大事なんですもの

 それに、恭也が私を頼ってくるなんて滅多にない事だしね」

 

恭也は申し訳なさそうに桃子に言うが、桃この方は純粋に嬉しいようだ

それも無理はない

恭也は、普段誰かに頼る・・・と言う事をせずに、大抵は独力で解決してしまう

その恭也が頼ってきたのだ

いつも恭也に頼り切っている・・・と考えている桃子は

逆に恭也に頼られている・・・と言う現状に─不謹慎かもしれないが─喜びを感じていた

当然、そんな桃子の考えが想像もつかない恭也は首を傾げるだけだった

 

「そんなものなのか?」

「そんなものよ」

 

恭也の疑問に笑顔で答えた桃子は仕込みの為に翠屋に向かった

それを見送った恭也は誰にも見つからないよう、気配を殺しながら部屋に戻った

・・・庭に居る─放置とも言う─美由希の傍を通ったが、当然無視した

 

 

 

「「「「「えっ〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」

 

その日の高町家の朝食は驚愕の叫びから始まった

 

 

 


あとがきと言う名の言い訳

 

セティ「遅い!」

スミマセンスミマセンスミマセン・・・(平身低頭)

セティ「完成間近だと思い油断したわ・・・まさかここまで遅れるとは・・・」

スミマセンスミマセンスミマセン・・・(平身低頭)

セティ「しかも全然違う話しだし・・・『恭也お仕置き編(仮)』はどこいったの?!」

スミマセンスミマセンスミマセン・・・(平身低頭)

セティ「とりあえず・・・釈明をしなさい!」

・・・山場まではかけているし、オチも決めているのだが・・・

どうにもその間がしっくり来るように書くことが出来なくて・・・

セティ「だから、気分転換にコレを書いた・・・と?」

仰る通りです・・・

セティ「何か続くようだけど・・・連作物なんてアンタに書けるの?」

・・・たぶん・・・今回は導入で、次回は原因の説明・・・

で、本格的に始めるのは3話目以降になりそうだが・・・

セティ「ネタはあるんでしょうね?」

その点は大丈夫だ(断言)

基本的に『ドラ○もん』みたいな短編連作物を想定して書いていくつもりだから

セティ「設定だけ決めて、後は行き当たりばったり・・・と」

・・・身も蓋もない言い方だが・・・その通りだ・・・

セティ「それじゃあ、とっとと書きなさい・・・明日中に」

・・・早く書くことに異論はないが・・・明日中は・・・

セティ「いいから・・・さっさと書く!」

はい〜(泣)






行き成り縮んだ恭也。
美姫 「その辺りの事情は追々分かるとして…」
哀れなのは美由希だよな。今回に限って言えば、何も悪い事してないのに。
美姫 「それにしても、何故縮んだのかしらね」
このままだと学校は無理だろうしな。
美姫 「どうなるのかしら」
次回も待っています。



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