「♪〜〜♪〜〜〜♪〜♪〜〜♪」

 

その日、フィリス・矢沢はご機嫌であった

その理由は手元にある一枚のカルテにある

それの名前の欄にはこう書かれていた─

 

『高町恭也』

 

・・・と

 

フィリスの想い人でもある恭也は彼を知る周囲の者に

『筋金入りの病院嫌い』、として知れ渡っていた

─病院での治療が嫌いなのではない・・・そこでの待ち時間が嫌いなのである

その為恭也が病院─フィリスの元─を訪れる事は

週に一度の定期健診の時くらいのものである

─それすらもすっぽかされる場合もあるが・・・

そんな恭也が今日は此処に来ている─定期健診日ではないにもかかわらず・・・

なので、フィリスは誰の目から見ても浮かれていた

 

「次、高町さん♪」

 

恭也の診察順になった為、フィリスは扉の向こうに嬉しそうに声をかける

そして、その声に促されるように入ってきた人物を見て・・・フィリスは首を傾げた

フィリスの目の前に現れたのは、傍目には親子にも見える二人の男女であった

女性の方─美沙斗─はフィリスも面識があるので問題はない

問題は・・・美沙斗と一緒に居る少年の方だ

フィリスはこの少年と面識はない・・・・・・はず

確信が持てないのは、少年の顔がどこか似ているからである

─そう、想い人でもある『高町恭也』に・・・

それを察したわけでもないが、恭也が口を開く

 

「こんにちは、フィリス先生」

「・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・・恭也くん?」

「はい」

 

フィリスの躊躇いがちな疑問にも恭也は即答する

 

「えっ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 

・・・フィリスの声が辺りに響き渡った

 

 

 

数分後─

恭也は、フィリスが落ち着いたのを確認してからこれまでの経緯を説明した

 

「・・・と言う事なんです」

「はぁ〜・・・そういう事でしたか・・・」

 

説明を受けたフィリスは、感心とも呆れとも取れるような感想を漏らした

そこで初めて疑問に思ったのか・・・

 

「それで、此処に美沙斗さんと一緒に来た理由は?」

「何せ今朝いきなり小さくなってしまったからね

 一応他にも異常がないか調べに来たんだよ

 ・・・恭也一人だとサボる可能性があるらしいからね」

「・・・そんな事しませんよ」

 

フィリスの疑問に、美沙斗が答えた

そんな美沙斗の答えを恭也は顔をそらしながらも否定した・・・が

 

「恭也くん・・・(はぁ〜)

 そういうセリフはせめて定期通院をサボらないようにしてから言ってください」

 

フィリスは無駄だと思いつつも恭也に言った

恭也の方はバツが悪いのか、無言でいる事しか出来なかった

そして、フィリスは医者の顔つきになった

 

「それでは、一通り調べてみますね・・・こちらへどうぞ」

 

フィリスはそう言うと、検査をする場所へ二人を伴い移動した

 

 

 

─2時間後

 

「う〜ん・・・前例がないので確証は持てませんが・・・」

 

フィリスは難しい顔をしながら検査の結果を自分の推論を交えつつ説明し始めた

 

「まず、恭也くんも実感していると思いますけれど・・・

 右膝を含め、体中に在った傷跡が全て消え去っています

 そして、身体能力がかなり低下していますけれど

 これは見た目─年齢─相応になった為・・・と考えられます

 元の恭也くんが常人を遥かに凌駕していたので推測するしかありませんが

 おそらく、10歳程度の身体能力だと思われます

 ・・・それでも平均を凌駕していることには変わりはありませんけれどね」

 

最後に苦笑を漏らしながらもそう付け加えた

 

「以上の事を踏まえて考えますと・・・

 恭也くんの身体は単純に小さくなったわけではなく、10歳程度まで若返った

 ・・・と考える事が出来ます」

 

フィリスが検査の結果から導き出した結論で締めくくると

 

「それで、フィリス先生、元に戻る事は出来ますか?」

 

恭也が一縷の望みを掛けながらフィリスに問いかけるが

 

「残念ながら・・・皆目検討も付きません

 話を聞く限り、偶発的な作用が及ぼした影響が大きいようなので

 忍さんの薬の成分を調べても、治療法が見つかる可能性が限りなく低いのです」

 

フィリスは申し訳なさそうに答えるしかなかった

それでも一応は・・・という事で、恭也は持ってきていた薬をフィリスに渡した

 

そうして、一段落着いたところに─

まるで見計らっていたかのようなタイミングで、唐突に気配が一つ増えた

しかし、その事に関して、この場に居る誰もが驚く事はなかった

・・・呆れる事はあったかも知れないが

何故なら・・・

 

「フィリス、金貸してくれ、今月ピンチなんだ」

 

いつもの様に妹に金をたかりに来たリスティ・槙原だったからだ

 

「リスティ、いつも言っているでしょう

 テレポートでいきなり来ないで・・・って」

 

いつもの様に姉の行動に文句を言うフィリスだが

 

「硬い事言うなよフィリス」

 

こちらもいつもの事なので、妹の諫言を無視するリスティだった

と、そこで初めてフィリスの他にも人が居ることに気付いたのか

そちらに目を向けると・・・

 

「あれ?美沙斗じゃないか・・・

 それに、その子は・・・もしかして、美沙斗の隠し子かい?」

 

リスティは面白い物を見付けたかの様な笑みを浮かべながら美沙斗に問いかける

 

「えっ・・・?!・・・親子に見えるものなのかい?」

「まぁ、昔も似たような事を言われた事がありましたし、おかしくはないかと」

「そう言えばそうだったね」

 

リスティの疑問に恭也と美沙斗が苦笑を浮かべながらそう答えた

 

「美沙斗の子供じゃないとしたら、一体この子とどういう関係なんだい?」

 

どうやら本気で美沙斗の隠し子だと思っていたリスティはその答えに更に困惑した

 

「この子は恭也だよ」

「俺ですよ、リスティさん」

「・・・・・・・・・はぁっ?!」

 

美沙斗と恭也が口をそろえてそう答えると、リスティは固まってしまった

 

 

 

リスティが叫びだす前に─朝から何度も同じ反応を繰り返されるので─

恭也は事情を掻い摘んで説明した

 

「・・・つまり恭也は10歳に若返ってしまった・・・と・・・?」

「ええ、そう言う事になるみたいですね」

 

恭也から説明を受けたリスティは変に納得しながらも

確認のために恭也に問いかけるが・・・本人はいたって冷静だった

 

「元の姿に戻れないかもしれないのに、随分と落ち着いているじゃないか?」

 

恭也の落ち着き様に疑問を感じたリスティはその事を恭也に尋ねるが・・・

 

「慌てた所で元に戻れるわけでもありませんから」

「そりゃそうだ」

 

恭也にそう言われて納得した

 

「それで、リスティさんに頼みがあるのですけれど・・・」

「・・・言っておくけどこんな面白い事を内緒にする訳にはいかないよ」

「どうせ黙っていて欲しいと頼み込んでも言いふらすつもりでしょう?」

「当然、まぁ条件次第では内緒にしても構わないけど?」

 

そう言ってリスティは意味ありげな視線を恭也に送るが

恭也がその意味に気付く事は当然無い

 

「いえ、口止めではありませんから

 それに美由希辺りから那美さんに話が伝わっていますよ

 特に口止めもしていませんしね」

(それに、アイツなら例え口止めしていたとしても話すだろうがな)

 

恭也は胸中でそう付け加えながらリスティに答える

─自分の意図に気付かれなかったリスティは不満そうだったが・・・

 

「それで、頼みなんですけれど・・・」

「口止めじゃなければ一体何だい?」

「ええ、さすがにこの身体では護衛の仕事をする訳にもいきませんからね

 どうやら身体能力も落ちているみたいですし・・・

 ですからしばらく護衛の仕事は休業する事にしました」

「まぁ、そう言う事なら仕方ないね」

 

リスティは恭也の説明に納得した・・・内心複雑だったが・・・

 

(でも、恭也が使えないのは正直痛いなぁ・・・

 何せ護衛に関しては恭也以上の人材はいないし・・・)

 

そんな胸のうちを悟られるわけにもいかないので

リスティは妹のフィリスをからかう事で誤魔化す事にした

 

「しかし、フィリスは嬉しいんじゃないのか?」

「・・・リスティ、どういう意味?」

「だって、今の恭也となら一緒にいても違和感が無いだろ?」

 

そう、今の恭也は中身はどうあれ見た目は小学生なのだ

そして、こう言ってはなんだがフィリスは見た目がとても幼い

さすがに病院にいる時は平気だが

一人で買い物に行くとたまに小学生に間違われる事もある

そんな訳で、仮にそんな二人が一緒に並んでいたりすると・・・

 

「そう、仲の良い『小学生』のお友達・・・

 として、周りからお似合いだと思われるんじゃないかなぁ♪」

 

リスティは「小学生」の部分を強調してフィリスに自分の考えを言う

そんな事─本人がかなり気にしている事─を言われたフィリスは

当然黙っているわけも無く

 

「リ〜ス〜ティ〜(怒)」

 

と、怒気を顕にしながらリスティに詰め寄った

 

「それは一体どういう意味なのかなぁ?(怒)」

「どういう・・・って、フィリスはお子様体型だ・・・と言うことだよ♪」

 

リスティは楽しそうにそう言うとその場─フィリスの元─から逃げ出した

 

「待ちなさ〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!!」

 

フィリスは逃げるリスティを追いかけ始めた

突如始まった姉妹による追いかけっこを

恭也と美沙斗は微笑ましい物を見るかのように笑みを浮かべながら眺めていた

 

・・・と、その時

 

(ブルッ)

 

唐突に恭也が身体を震わせた

 

「恭也・・・体の具合でも悪いのかい?」

 

そんな恭也の様子に美沙斗は心配そうに声をかける

 

「いえ、何でもありませんよ美沙斗さん」

(何か嫌な予感がする・・・)

 

美沙斗に心配を掛けたくない恭也は微笑み─営業スマイルに在らず─ながら答える

当然の事ながら、そんな恭也の笑顔を直視した美沙斗の顔は赤く染まった

・・・いくら昔に見ているとは言っても耐性が付くものではないのだ

恭也は普段滅多に表情を変える事がない美沙斗の様子に心配したのか

 

「美沙斗さんこそ平気ですか?

 何だか顔が赤いようですけれど・・・」

 

と、まるで見当違いの事を尋ねる

・・・身体が若返っても朴念仁な所は相変わらずのようだ

 

「ああ、大丈夫だよ・・・」

 

美沙斗は苦笑しながら恭也の考えを否定した

恭也はそんな美沙斗の様子に首を傾げながらも納得することにした

そして、いつの間にか周囲が静かになっていたのでフィリス達の方に目を向けると

 

「何をやっているんですか!あなた達は!」

「「ごめんなさ〜い(泣)」」

 

フィリスとリスティが仲良く婦長に叱られていた

その様子を眺めながら恭也と美沙斗はしばしのんびりとした時間を過ごした

 

 

 

一方恭也が悪寒を感じた頃─

 

「・・・と言うわけなので、お願いしますね♪」

「ええ、任せておいて桃子

 それと、ありがとうね♪こんな面白い事を教えてもらって♪」

 

翠屋では桃子が暗躍していた

 

 

 

 


あとがきor言い訳

 

・・・スミマセンでした(土下座)

セティ「・・・それは遅くなったことに対する理由?(怒)」

・・・それもあります

セティ「・・・と言うことは他にもあるわけ?(怒)」

え〜と・・・此処のHP改造中に修正版を送りました・・・4つほど・・・

セティ「アンタは!管理人さんの仕事を増やしてどうするの!」

ホントにスミマセンでした(土下座)

あと今更で申し訳ありませんが、HP改造おつかれさまです

セティ「それで、何でまた送ったのよ?」

いろいろあるが、一番は三人称の修正です・・・

セティ「それって・・・アンタがキチンとしていればよかったことよね?」

・・・はい・・・仰るとおりです・・・

セティ「はぁっ〜・・・管理人さん

    この馬鹿にはキツ〜ク言っておきますのでどうかお許し下さい」

・・・・・・・・・(土下座)

セティ「それで、今回フィリスの恭也お持ち帰りもリスティに秘密にすることも

     無かったようだけど?」

感想版でそういった予想をしてくれた人も居たけれど・・・

セティ「どうしてそうしなかったわけ?」

う〜んと、フィリスの方はフィリスの本質が医者だから・・・

そう考えはするかもしれないけど、それを患者に悟られることはないかなぁ・・・と

セティ「なるほどね・・・で、リスティの方は?」

え〜と、リスティに仕事で信用を失わせない為かな?

セティ「恭也に振るつもりで請け負ってきても肝心の恭也がこれじゃあねぇ

     一回引き受けて出来ません・・・じゃあ確かに信用に関わるわね」

そういう事、何せああいう仕事は信用が第一だしな

セティ「失った信用を取り戻すことは難しいしね」

ああだから恭也なら迷わずに伝えたかなぁ・・・と

セティ「と言うわけで・・・謝罪の意味を含めて書きなさい!」

・・・分かりました

セティ「私刑は書きあがるまで猶予してあげるわ」

・・・・・・・・・・・・





おお、そう言えばそんな事もあったような…。
美姫 「と、このように本人は既に忘れています」
って、冗談だ。
美姫 「まあ、あまり気にする必要はないけれどね」
うんうん。それはそうと、小さくなった恭也にはこれから災難が待ってそうだな。
美姫 「よね。最後の桃子さんの相手をしているのって…」
多分、あの人じゃないかと。
もしそうなら、何を企んでいるのやら。
美姫 「次回もお待ちしてますね」
ではでは。



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