恭也' Monologue

二度目の量産型ヴォルクルスと倒した俺たちは、フェイトの治療の為俺の家に戻っていた。
フェイトの治療と言っても、肉体的なものではなく精神的なもの……
彼女は一般人とは違い、クローンとして作られた存在である。
その事に対して、他でもない自分を作った人物に……
いや、その人物の死体を操っていた今回の黒幕ルオゾールにフェイトは自我を崩壊しかけていた。
だから、俺はフィリス先生に頼んでフェイトを診てもらう事にした。
フィリス先生ならフェイトの自我を取り戻せるだろうと思ったから……
……まぁ、俺としては悲しむなのはの顔を見たくないだけなのだが。

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster−

Act:10「邪神覚醒」



恭也's View

フィリス先生がフェイトさんを連れて道場に行った。
残された俺となのはとはやては縁側で休んでいる。

「フェイトちゃん、元に戻るといいんやけどな……」

「そうだね……」

二人は親友であるフェイトさんの事を心配してる。
俺はあの子とは、直接話したわけじゃないが、それでも聞いた限りの話だとそれなりの境遇で育ってきた事はわかる。
だが、俺は二人と違ってフィリス先生を信頼している。

「フィリス先生に任せておけば大丈夫だ」

「恭也さん、あの人の事をやけに信頼してますなぁ」

「フィリス先生が、フェイトちゃんと似たような境遇だから?」

「確かに、なのはの言うとおりフィリス先生がフェイトさんと似たような境遇であるのは事実だけどな。
 それ以外にな、フィリス先生の専攻はカウンセリングなんだ」

フィリス先生のもっとも得意としているのはカウンセリング。
つまり、患者の心を癒す事に長けていた。
だからこそ、フェイトさんの心を癒す事が出来ると思ったわけだ。

「確かに、心を癒すのが専門やったら心強いなぁ」

「それに、フェイトちゃんとも境遇が似ているとなると、フェイトちゃんの辛さも分かってくれるしね」

「ああ、そうだ。
 完全にとは行かなくても、今回みたいに自暴自棄になるような事はないだろう」

俺はそう言ってお茶を飲む。
先の戦いとはうって変わって穏やかな空気が流れている。
シロとクロは気持ちいいのか、側で寝ている。
不意に、俺は気配を感じる。

「ふむ、どうやらなのは……
 俺の妹の方のなのはだが、帰ってきたようだ」

「ホントに凄すぎだよ、恭也君」

俺が気配でなのはが帰ってきたのを知った菜乃葉は、驚きを通り越して呆れて俺も見てる。
俺は、そんな菜乃葉に関してもはや何も言う事は無い。

「恭也さんの妹のなのはちゃんが帰ってきたとなると、こっちは菜乃葉ちゃんと呼んだ方がええんやね」

「うん、お願い。
 もっとも、なのはちゃんは真相しっているんだけどね」

「そっか〜。
 それにしても楽しみやな、こっちのなのはちゃんに会うのは」

「まぁ、驚く事は保障する。
 何せ、俺たちも驚いたぐらいだからな」

「そうだね〜。
 私なんかパニックを起こしちゃったし……」

なのはも菜乃葉の真相は知っているので問題は無いのだが、区別がつかなくなるのであえて呼び方を変えていた。
なのはは菜乃葉の事を慕っている。
そして、菜乃葉もなのはの事が気に入っているようだ。
そうしている内に、なのはが縁側にやってきた。

「ただいま〜。
 おにーちゃん、菜乃おねーちゃん、帰ってたんだ」

「お帰りなのは。
 つい、先程な」

「お帰り、なのはちゃん」

なのはは俺と菜乃葉に挨拶すると、はやての事に気づいたようだ。
はやてはと言うと、完全に目が点になっていた。

「おにーちゃん、この方は?」

「ああ、菜乃葉の友人の一人、八神はやてさんだ。
 ほら、菜乃葉が俺たちと会った時に言ってたろ」

「ああ、そういえば……
 菜乃おねーちゃんの親友だっけ?」

「そうだよ……
 って、はやてちゃん……
 なのはちゃん見て固まってる」

はやてが固まっているのに気づいた、俺と菜乃葉は苦笑している。
なのはははやてが驚いている理由に気づいたようで、一緒に苦笑している。
そして、固まっていたはやてがボソボソと喋りだした。

「ホンマに、あの頃のなのはちゃんにそっくりやなぁ」

「え〜と、初めまして、八神はやてさん。
 高町なのはといいます」

「えっ、ああ。
 こちらこそ初めましてや、なのはちゃん。
 八神はやてといいます」

なのはの自己紹介に、我を取り戻したはやては慌てて自己紹介している。
そんな二人に、俺と菜乃葉は苦笑しながらも見守っていた。
だが、再び俺を見たなのはは、表情が見る見るうちに変わっていった。
明らかに怒っているようだったが、俺には心当たりが無い。

「ところで、おにーちゃん……」

「うん、なんだ?」

「なんだじゃないよ……
 何、あの書置き!」

「ただ、『用事が出来た、東京に行く』と書いただけだが?」

「問題大有りだよ!
 あんな文だけで分かると思うの!?
 まったく、菜乃おねーちゃんのフォローがなければ、今頃パニックになってるよ」

「むう、済まん」

なのはの剣幕に俺はタジタジとなった。
流石にヴォルクルスの名前は出せないから、あんな書置きになっただけなのだが……

「まぁ、みんなには菜乃おねーちゃんの仕事の手伝いに行っているって、言っておいたから問題にならなかったけど……
 ただでさえ、おにーちゃんには武者修行の旅に行くとか言って音沙汰なかった前科があるんだから!」

「……恭也君」

「ほえ〜、こちらの恭也さんはごっついことしてはるんやなぁ」

なのはの一言に、ジト目で俺を見る菜乃葉と完全に呆れているはやて。
まぁ、確かになのはの言う事はもっともなんだが……
それにしても、なのはは言いたい事を言えたのか、やけにすっきりした表情になっていた。

「おにーちゃん、今後は気をつけてね」

「ああ、わかった」

なのはが懇願するように俺を見る。
俺は、そんななのはの頭に手を乗せ約束した。
菜乃葉もはやても、俺たちを見て苦笑している。
不意に、なのはが思い出したように話し出した。

「ところで、フィリス先生の靴と、知らない人の靴が二人分あったんだけど?
 一つははやてさんで確定だと思うけど……」

「ああ、実はな……」

玄関から上がってきたなのはは、フィリス先生とフェイトさんが来ている事に気づいたようだ。
その事を話そうかと思ったのだが、菜乃葉がその事について話し出した。

「私のもう一人の親友、フェイトちゃんが来ているの。
 ただ、フェイトちゃんが心に病を抱えててね、フィリス先生に見てもらってるんだ」

「そうだったんですか……
 なのはは、てっきりフィリス先生が、病院サボりのおにーちゃんに制裁をする為に来たのかな、と思ったんですが」

「う〜ん、あながち間違ってはいない気はするね」

「おぃ、お前ら……」

「自業自得でしょ?」

「何時もの事でしょ、おにーちゃん?」

「うぐっ」

菜乃葉となのは、二人からのツッコミに俺はぐうの音が出ない。
そんな俺をみて、菜乃葉となのははそろって溜息を付いて呆れていた。
それにしても、この二人は本当に息が合っている。
菜乃葉は、再びなのはを見て話し出していた。

「まぁ、でも、フェイトちゃんの事は後で紹介するね」

「はい!
 よろしくお願いします、菜乃おねーちゃん」

そんな二人を見ていたはやては、呆然とするように呟いていた。

「ホンマに仲の良い姉妹にしか見えんなぁ」

「出会った頃から、妙に息が合っていた」

俺ははやてに、当時から思ってた事を口にした。
菜乃葉となのはは、はやての言葉にテレながらも笑っている。
そうしている内に、カウンセラーが終わったのかフィリス先生とフェイトさんが道場から出てきた。
二人の表情を見ている限り、どうやら成功したようだ。

「あっ、フェイトちゃん!」

「おぅ、フェイトちゃんの表情が明るくなっとる!」

菜乃葉とはやては、道場から出てきた二人に気づいて二人に近づいていった。
俺となのはは、そんな四人を見守っている。
フィリス先生は菜乃葉とはやてが近づいてきたのに気づいたのか、フェイトさんを送り出して俺たちの方に近づいてきた。

「なのは、はやて……
 ゴメンね、酷い事言っちゃって……」

「気にしないで、フェイトちゃん。
 でも、自分を取り戻したんだね?」

「うん。
 フィリスさんのおかげで……」

「あたしらだって迷惑かける事もあるんや。
 だから、フェイトちゃんも気にせんでええで。
 まぁ、なんにしても、これで元の鞘に戻った訳や」

「うん……
 ありがとう、二人とも」

菜乃葉とはやては、フェイトさんが自分を取り戻した事に喜びを表していた。
逆にフェイトさんは、今までの事を二人に謝っている。
菜乃葉、フェイトさん、はやてのそんなやり取りを見ながら、俺は隣に座ったフィリス先生と話していた。

「お疲れ様です、フィリス先生」

「ふふ、ありがとう恭也君」

俺は、フィリス先生にお茶を入れて差し出した。
フィリス先生は、俺の出したお茶を一口飲み話し出す。

「でも、貴方から連絡があった時は、ビックリしたよ。
 私と似たような境遇の娘の自我が崩壊しかかっているから見てくれ、だっけ?」

「そうでしょうね……
 ですが、俺が考えた中であの娘の心を救えると思ったのは、フィリス先生だけでしたから」

「ふふ、信頼してくれてありがとね。
 まぁ、貴方の信頼には応えれたのかな?」

「あの二人の表情を見たら、自ずと答えが出ますよ」

そう言って、俺は三人の方を見た。
フィリス先生も、俺につられて三人の方を見る。
なのはは三人の方を見て喜んでいた。

「それでも、一番手間がかかる貴方よりかはスムーズに事が進みましたけどね」

「……勘弁して下さい」

不意に言った、フィリス先生の皮肉に俺は謝る事しか出来ない。
菜乃葉たちも一通り話し終えたのか、こっちに戻ってこようとしていた。
だが、フェイトさんがなのはと目が合った時に、はやて同様目が点になって絶叫した。

「なのはが……
 なのはが二人居る!?」

《おい、なのは?》

《あぅ、恭也君。
 フェイトちゃん……
 自我崩壊中の記憶が飛んじゃったみたい》

《フィリス先生が居る中だとマズイとちゃうか?
 なんとか誤魔化さないとあかんやろ》

《そう言えば、フェイトさんはなのはと初対面だったな?
 まぁ、他の連中の時も驚いているから今回は誤魔化せるが……》

《うん、その間にこっちで説明しておくね》

俺は、慌てて菜乃葉とはやてに念話を飛ばす。
菜乃葉もはやても俺の意図に気づいてたようで、フェイトさんのフォローに回っている。
俺は、フィリス先生に説明しようとしたのだが、フィリス先生は苦笑しているだけだった。

「そう言えば、フェイトちゃんはなのはちゃんと初対面だっけ?」

「ええ、そうです。
 まぁ、フェイトさんとはやては今日来たばかりですしね」

「どおりで驚くと思った。
 菜乃葉ちゃんとなのはちゃん、似てるもんね」

「まぁ、側から見れば姉妹にしか見えませんけど……」

「そうね……
 二人の仲も良好だしね」

「ええ、そうですね。
 おい、なのは?」

「何、おにーちゃん?」

「フェイトさんに挨拶してこい。
 菜乃葉も手招きしてるぞ」

「あっ、ホントだ。
 じゃぁ、いってきま〜す」

俺はなのはを菜乃葉の下に送り出した。
フィリス先生と離れていればぼろが出ないと判断したのもあるが、実際に菜乃葉が手招きしていたからだ。
なのはは菜乃葉の隣により、フェイトさんに自己紹介している。

「え〜と、初めまして。
 高町なのはって言います」

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンだよ。
 よろしくね、なのは。
 さっきは驚いちゃって、ごめんね」

「気にしないで下さい。
 菜乃おねーちゃんも、はやてさんも、初対面の時は驚いていますから。
 こちらこそよろしくお願いします。
 フェイトさん」

どうやら、フェイトさんも理解し納得したようだ。
まぁ、これで当面は問題ない。
後は、フェイトさんの義理の兄であるクロノさんが目覚める事を祈るだけだ。
そんなことを考えていながら、四人のやり取りを眺めている。

「それにしても、なのはって菜乃葉に比べてしっかりしてるように見えるね」

「あ〜、それ!
 あたしも思っていたんよ」

「う〜、みんな酷い……」

フェイトさんとはやての一言に、菜乃葉は恨めしそうに二人を見ている。
なのはは苦笑して菜乃葉の援護をしていた。

「そんなこと無いですよ。
 菜乃おねーちゃんはしっかりしてますから」

「なのはちゃんだけだ。
 私の味方をしてくれるのは」

菜乃葉はなのはを抱きしめる。
なのはも菜乃葉の行為を喜んで受け止めている。
そうして、四人は俺とフィリスさんの所へ戻ってきた。
そういえば、フェイトさんとはまともに話した事なかったな。
戦闘に介入した時は、直後に離脱させたし、その後は自我崩壊状態に近かったのだが。
フェイトさんも気づいたのか、俺と目が合ったとたん自己紹介をした。

「あっ、済みません。
 ご迷惑をかけました。
 私、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと言います」

「あっ、こちらこそご丁寧に。
 高町恭也って言います。
 それにしても、フェイトさん……」

「あっ、あの……
 呼び捨てで構いませんよ。
 それに普通に話していただけたら……
 こちらも、恭也さんって呼ばせて頂きますから」

「……了解した。
 それにしても、どうやら吹っ切れたようだな?」

「ええ、おかげさまで……
 恭也さんにもご迷惑おかけしました」

俺も、フェイトに自己紹介する。
それにしても、フィリス先生に会わせたのは正解だったようだ。
先程見ていたフェイトと明らかに違って、生き生きとしている。
そんな仲、俺とフェイトのやり取りを見ていた、菜乃葉とはやてが急に不機嫌になる。
なのはは菜乃葉とはやてを見て苦笑し、フィリス先生は微笑みながら成り行きを見守っていた。

「……どうした二人とも?
 何で、フェイトと挨拶しただけなのに不機嫌そうになるのだ?」

「えっ、べっ……
 別に……」

「なっ、何でもありまへんよ?
 恭也さんの誤解や、誤解」

「菜乃葉もはやても慌てて顔を背けるなんて……
 やましい事を考えてたんじゃないの?」

「さっきまで自暴自棄になってた人が言う台詞?」

「ホンマや。
 散々人を心配かけよってからに、元気になったとたんそういうこと言うんか?」

「それはそれ、これはこれだよ」

なにやら三人の間で不穏な空気が現れてきていた。
俺はとばっちりを受けないように黙ってる。
一触即発になりかけたとき、なのはが止めに入った。

「菜乃おね〜ちゃん?」

「はっ、はい!」

「フェイトさん?」

「なっ、何かな、なのは?」

「はやてさん?」

「なっ、なんや!?」

「三人とも、喧嘩は駄目ですよ」

「なのはちゃん、ゴメンなさい」

「ゴメン、なのは」

「ゴメンな〜、なのはちゃん」

なのはの雰囲気に呑まれた三人は、あっさり降伏した。
フィリス先生は、彼女たちのやり取りを見て苦笑している。

「あらあら、高町家の最高権力者は菜乃葉ちゃんたちにも有効なのね」

「まぁ、日頃の行いなんでしょうけど」

《こっちのなのはちゃんって、怒らすとこわいんやな》

《あの年で、あそこまでの雰囲気を出せるものなのね……》

《まぁ、日頃から鍛えられているからね》

《そうだな。
 日常的に顔を会わせたら、張り合うコンビが居るからな》

俺と菜乃葉、はやて、フェイトはなのはを見て苦笑している。
なのはは、俺たちの表情を見てキョトンとしていた。

「さてと、一息ついた所で……」

フィリス先生の言葉に、俺は悪寒を感じた。
その場から離れようとする俺だが、俺の右肩には菜乃葉の手で握られ……
そして、俺の左腕にはなのは手によって握られていた。

「恭也君?」

「お兄ちゃん?」

俺は、恐る恐る二人を除いたが、二人は笑顔で俺を見ていた。
否、目は笑っていない!
俺は完全に青ざめていた……
そんな俺を無視して、菜乃葉となのははフィリス先生に頼み込んだ。

「恭也君のマッサージ、よろしくお願いします」

「おにーちゃんのマッサージ、よろしくお願いします」

「はい、二人とも協力感謝です。
 さて、恭也君?
 覚悟はいいですか?」

菜乃葉となのはのはもった声に、フィリス先生は満面な笑みを浮かべ答えた。
そして、俺はフィリス先生に引きずられて行った。



なのは's View

恭也君が、フィリス先生に引きずられてマッサージを受けている間、私たちは縁側で話しています。
時々、恭也君の絶叫が聞こえてきますがあえて無視しています。
フェイトちゃんは、フィリス先生のおかげで自分を取り戻す事が出来ました。
その事に関しては素直に喜んだ私です。
だけど、自分を取り戻したフェイトちゃんは、どうやら恭也君に興味を抱いたようで私は複雑な気分です。
まぁ、フェイトちゃんもお兄ちゃんに惹かれていたのは事実なので、可能性はあった訳ですけど……
そんな風に考えてたら、はやてちゃんがいたずらを思いついた表情をしました。
私は直感的に危険信号を感じています。
だけど、逃げる事は許されませんでした。

「さてと、菜乃葉ちゃん?」

「にゃ、何かな……
 はやてちゃん?」

「あたしとフェイトちゃんが心配している間、菜乃葉ちゃんはええ思いしていたようやな?」

「そっ、そっ、そっ、そんな事はないよ?」

「そういえば、妙に恭也さんと仲が良いじゃない、菜乃葉?」

「そっ、それは……
 その……」

はやてちゃんもフェイトちゃんもやっかみモードに入っています。
そして、こともあろうかなのはちゃんも乗ってきました。

「菜乃おねーちゃん、おにーちゃんと一緒に寝た仲なんだよ」

「なっ、なっ、なのはちゃん!
 それ、言っちゃ駄目ぇぇぇぇえ!」

なのはちゃんの言葉を慌てて止める私ですが、間に合いません。
フェイトちゃんとはやてちゃんは、なのはちゃんの爆弾発言に絶句……
そして、フェイトちゃんは負のオーラをかもし出しています。
はやてちゃんは、相変わらずいたずらを思いついた表情をしています。
なのはちゃんはそんな二人を無視し、私に話してきます。

「菜乃おねーちゃん……
 おにーちゃんの事、嫌いなの?」

「そっ、そんな事は無いよ!
 というか、恭也君の事、そんな風に見ていたら一緒に行動していないって!」

「そうだよねぇ〜。
 菜乃おねーちゃんの行動見てたら、お兄ちゃんの事が好きなのは一発でバレバレだもんね」

「あぅ〜、なのはちゃん……」

なのはちゃんのしてやったりな表情に、私は何も言い返せません。
うう、なのはちゃん……
しっかり桃子さんの血を引き継いでいるようです。
さらに、はやてちゃんが便乗して爆弾を破裂させました。

「菜乃葉ちゃんったら、人工呼吸と言い訳して恭也さんとキスしたんやで」

「はっ、はやてちゃん!?」

はやてちゃんの一言に、なのはちゃんはやけに嬉しそうにしています。
逆に、フェイトちゃんはどす黒いオーラーを身体中から噴出しています。
そして、爆弾を破裂させたはやてちゃんは、ニヤニヤと笑っているだけでした。

「菜乃葉?」

「にゃ、何かなフェイトちゃん……?
 というか、バルディッシュ構えて……」

「今まで私たちがどれだけ心配していたか……
 それなのに、自分だけ良い思いしてたとわね……」

「そっ、それは誤解だよ、フェイトちゃん!
 それに、私の気持ちなんて、恭也君は気づいていないよ!!」

私の叫びに、はやてちゃんはしてやったりの表情を浮かべます。
そして、フェイトちゃんも先程とうって変わって穏やかな表情になりました。
どうやら、私は二人に嵌められたようです。

「いや〜、ここまで上手くいくとは思わんかったで〜」

「そうだね。
 なのはの本心を聞けただけでも、芝居した価値はあったね」

「……あうぅ、みんな酷い」

フェイトちゃんとはやてちゃんに嵌められた私は、落ち込んでいます。
そんな私を見てフェイトちゃん、はやてちゃん、なのはちゃんは苦笑しています。
フェイトちゃんとはやてちゃんだけなら念話で企む事は出来ますが、何故になのはちゃんは二人の意図に気づいたのか疑問に思いました。

「それにしても、なのはちゃん。
 あたしらの意図によ〜気づいたな」

「えへへ。
 まぁ、日頃から悪巧みする人が居ますんで、大概の事なら把握しちゃうんですよ。
 それでも、菜乃おねーちゃんを苛めるだけなら、参加するつもりはなかったんですけどね」

「なるほど。
 私たちの雰囲気で察したわけだね?」

「はい!」

なのはちゃんの満面な笑みに、私はもはや何も言う気力はありません。
はやてちゃんは相変わらず、いたずらを思いついた表情で話しています。

「それにしても……
 なのはちゃんって、実はブラコンやったんやねぇ〜」

「どおりで、ユーノの事なんて気にしていなかったんだ」

はやてちゃんとフェイトちゃんの言葉に、私は少しばかり怒りを感じています。
ユーノ君はあくまで友達ですし、日頃からからかわれているので特に問題は無いのですが……
ブラコンって言葉には、流石に私は否定します。
だって、お兄ちゃんと恭也君は姿が似ていても中身は違うから……

「二人とも、何か勘違いしていない?」

私の言葉に、二人はキョトンとしています。
そんな二人を無視し私は話を続けます。

「言っとくけど……
 恭也君が、ただ単にお兄ちゃんの若い時と一緒だったら、私は並行世界のお兄ちゃんとしか認識してないよ。
 私が恭也君に惹かれてると自覚したのは、恭也君が私と似たような境遇を体験してたから……」

そう、私が恭也君に惹かれたのは、恭也君が私と似ていたから。
そして、家族でも気づいていなかった、私が抱えていた闇に気づいて振り払ってくれた恭也君だから。
……いや、家族は気づいていたのかもしれませんが、それでも振り払うだけの力がなかった家族と違い、恭也君はただ一言だけで、私を癒してくれたから。
だからこそ、私は恭也君の事が好きになったんだと思います。
それと共に、私は恭也君と一緒に居たいと思うようになりました。
たとえ、二度と私の家族に会えない事になったとしても……
それでも、今の私は恭也君を選びます。
この時、私は自覚しました。
この世界の高町恭也……
不破恭也を愛していると……
気づいた私は、気づかせてくれた二人に感謝します。
ちょっとは悔しいですけどね。

「フェイトちゃん、はやてちゃん……」

「なんや、急にあらたまって?」

「菜乃葉……
 怒っていないの?」

私の雰囲気に、疑心難儀になっているフェイトちゃんとはやてちゃん。
だけど、私はそんな二人に満面な笑みを浮かべて話しました。

「二人ともありがとね。
 おかげで、自分の想いを自覚できたから」

私の言葉に、二人は一瞬目が点になって……
それから、二人とも顔が青ざめて頭を抱えていました。

「あかん、からかうつもりが敵に塩を送ってもうた」

「あぅ、とんだ所に伏兵が現れちゃった」

そんな二人とうって変わって、なのはちゃんは喜んでいます。
私は、二人よりもなのはちゃんの方が気になったので聞いてみました。

「どうしたの、なのはちゃん?」

「えへへ。
 なのはも、菜乃おねーちゃんがおにーちゃんとくっついたら嬉しいなと思って」

「ふふふ。
 ありがとね、なのはちゃん」

「いえいえ」

私は、喜んでいるなのはちゃんの頭をなでます。
並行世界の自分だとはいえ、育ち方が違えばこうも変わるものなのかなと思いましたけど……
相変わらず、頭を抱えてる二人に溜息を付いて私は話しました。

「……二人とも、そんなに頭抱えないでよ。
 だいたい、私が恭也君の事をいくら想ってたって……
 恭也君が私を選ばなかったら、ただの一方通行なんだよ?」

私の言葉に、二人は我を取り戻し苦笑して返してきました。

「あはははは、そうやね〜。
 最後は恭也さんの気持ちやね」

「ふふふ。
 なら、私も負けないよ、なのは」

とたんに元気を取り戻す、はやてちゃんとフェイトちゃん。
そんな二人に一瞬呆れましたが、私は二人が恭也君を想う根底に気づきました。
だから、そんな二人に先程の仕返しを開始します。

「だけど、二人とも……」

「何や、なのはちゃん?」

「何、なのは?」

怪訝そうな表情を浮かべる、はやてちゃんとフェイトちゃん。
そんな二人に、私は絶望を与えました。

「恭也君をお兄ちゃんと重ね合わせてるんなら、それこそ結ばれる事はないよ。
 さっきも言ったけど、恭也君とお兄ちゃんは全然違うからね」

私の言葉に、二人は固まってしまいました。
そんな二人を見て、私は苦笑しています。
私は、ライバルを蹴落とす事が出来たと、内心では喜んでましたけど。
なのはちゃんは、何か思いついたのか二人に話し出しました。

「フェイトさん、はやてさん……」

フェイトちゃんもはやてちゃんも、私の言葉にショックを受けて反応を示しません。
だけどなのはちゃんは、固まっている二人を無視し話を続けます。

「おにーちゃんを菜乃おねーちゃんと同じようにからかうなら、それ相応の覚悟が必要ですので……」

なのはちゃんの言葉に、私は苦笑して続けます。

「何せ、握力90Kgの全力マッサージでお返しされるからね」

「おにーちゃん、本気で怒らすと怖いですから」

実際に、恭也君の逆鱗を触れた桃子さんの末路は、それはもう想像に出来ないぐらい悲惨なものでした。
それに、毎回とばっちりを受ける美由希さんには少し同情できます。
一方、なのはちゃんの話を聞いたフェイトちゃんとはやてちゃんは、完全に魂が抜けていました。
まぁ、でも……
ようやく、何時もの日常に戻った気がします。
それが、束の間だったとしても……
私は、この日常を素直に楽しんでいました。
そしていつか、恭也君に自分の気持ちを伝える事が出来ればと思いながら、私は空を見上げていました。



クロノ's View

僕は、夢を見ていた。
いや、夢と言うより過去の記憶を思い出していた。
闇の書事件の時にあった、一時の記憶を……
あの時、フェイトは守護騎士たちが擬似人格プログラムと同じだと認識していた。
その時の僕や母さんは、フェイトの考えを否定していた。
……いや、考えるなと強制していただけだった。
実際、フェイトの生まれは特殊……
いわば禁断の技術で生まれた存在。
彼女自身は被害者なのだが、それでもその問題はまとわりつく現実……
結局、僕は……
いや、僕を含むフェイトの知り合いには彼女の心を本当の意味で解放できる存在が居なかった。
だから、フェイトは表にはださず、ずっと抱え込んでいた……
それが、今回で表面化してしまった……

「結局、僕はフェイトの抱えていた闇を、気づきながらも振り払う事は出来なかったんだな」

僕は、そう呟いたのと同時に目を覚ました。

「あら、クロノ君。
 気がついたんだ」

「あっ、シャマルか?
 ここは……?」

「クラウディアの医務室よ、あの戦闘からす既に12時間は経過しているわ」

どうやら、プレシアからの攻撃で気絶してから既に12時間は経過しているようだ。
だから、僕は気になった。
あの後の戦闘も、フェイトの事も……

「僕が気絶してからどうなった?
 シャマルがここにいると言う事は、既に終わっていると思うが……」

「ええ、終わっているわ。
 なのはちゃんと、なのはちゃんが連れてきた助っ人のおかげでね」

どうやら、なのはと彼女に協力していた不破恭也さんのおかげで終わっていたようだ。

「そうか……
 ところでフェイトは?」

「今、クラウディアと離れているわ。
 フェイトちゃん、自我崩壊しかかっていたから現地のカウンセラーにカウンセリングを頼んでいるの」

「やはり、フェイトは自我を保てなかったか……」

予想した通り、フェイトは自我を保てなかった。
無理も無い、他でもなく生み出した存在に……
母親と慕っていた存在に、再び否定されたのだ。
だから、現地のカウンセラーでも癒す事は出来ないと僕は思う。
不意に、医務室のドアが開く。
ドアから御神提督が現れて、僕のほうにやってきた。

「クロノ君。
 どうやら、気がついたようだね。」

「申し訳ございません、御神提督」

「いや、気にする必要はないよ」

御神提督は、僕を労わってくれる。
ただの部下ではなく、息子のように……
僕もまた、御神提督は上司だけでなく父親として慕っていたと思う。
だからこそ、僕は御神提督を信頼している。
だけど、フェイトの件については疑問に思った。

「フェイトは……
 現地のカウンセラーに、フェイトを癒す事はできるのでしょうか?」

僕の言葉に、御神提督は苦笑しながら話してきた。

「フェイト君の事、相当大事に思っているんだな、クロノ君は」

「ええ、義理とは言え妹なのは事実ですから……
 だからこそ、自分が不甲斐ないんです……
 フェイトの……
 彼女が抱えている闇に気づきながらも癒す事が出来ない自分が」

僕は、想いを露呈させた。
僕の想いを聞いた御神提督は、そのまま話を続ける。

「……君だけじゃないよ。
 なのは君もはやて君も、フェイト君が抱えている想いには気づいていた」

御神提督の言葉に、無言で僕は肯く。
僕の行為を確認した御神提督は、再び話し出す。

「実際、普通に生まれてきた人がフェイト君を癒す事が出来るかって言われれば、否だと私は考える……」

「それじゃぁ、何故!?」

僕の疑問の言葉に、御神提督は真剣に答えてくれた。

「そのカウンセラーがフェイト君と同じ境遇だとしたら……
 そして、そのカウンセラーがフェイト君と同じ想いを抱きながらも乗り越えてきたとしたら……
 私は、少なくともフェイト君にとって完全に癒す事は出来なくとも、プラスになると思ったから会わせることにした」

「!!」

御神提督の言葉に、僕は気づいた。
御神提督はただ単にカウンセラーの所に送ったわけじゃなく、確信が持てたからフェイトをそのカウンセラーに送ったんだと。
確かに、御神提督が言う人物ならフェイトの事を理解し癒してくれる可能性が高い。
そんな風に考えていたら、御神提督は苦笑して話し出した。

「まぁ、恭也がその方と知り合いだったんでな、試しにやってみようって話になったわけなんだ」

どうやら、フェイトの件もなのはと一緒に行動していた不破恭也さんが絡んでいるらしい。
ところが、僕は、御神提督の先程言った言葉に何か引っかかった。

「御神提督……」

「なんだ、クロノ君?」

「今、恭也って言いませんでしたか?」

僕の言葉に、御神提督は一瞬だけ目が点になり、慌てて苦笑して話し出した。

「あぁ、説明していなかったな。
 どうやら、この世界は私の出身世界で間違いない。
 そして恭也は、私の甥っ子だったよ」

「そうだったんですか。
 御神提督、よかったですね」

「ああ、そうだな……
 まぁ、こちらでの私は死んだ事になっていたけどな」

御神提督はそういって頭をかいた。
そんな御神提督の姿に、僕は苦笑している。
御神提督の話を聞いていた僕は、そう思われても仕方が無いと思った。
互いに苦笑しあう。
その側で僕たちを見ていたシャマルだったが、不意に彼女の携帯がなった。

「もしもし、はやてちゃん?」

『もしもし、シャマルか。
 ところで、わるいんやけど静馬の小父様と連絡とれるんかな?』

「はいはい、ちょうど近くに居るから変わるね」

どうやら、はやてからの連絡だったようだ。
シャマルは、電話を放して御神提督に渡す。

「はやてちゃんからです」

「ああ、ありがとう、シャマル君。
 もしもし、はやて君?
 静馬だが……」

『ああ、静馬の小父様。
 フェイトちゃんの件ですが……』

「どうなった?」

『ええ、フィリス先生のおかげで完全復活ですわ。
 フェイトちゃん、過去と振り切る事ができましたわ』

「そうか、それはよかった……
 こっちも、今しがたクロノ君が目を覚ました所だ」

『おぉ、そうなんですか?
 じゃぁ、フェイトちゃんに代わりますわ』

「ああ、頼む」

御神提督は、実に楽しそうに話している。
僕はその光景を見て苦笑していた。

『もしもし……
 御神て……
 あっ、済みません、静馬小父様ですか』

「ああ、フェイト君か?
 どうやら、気持ちに整理できたようだね」

『はい、おかげさまで……
 心配をおかけして申し訳ございませんでした』

「気にするような事じゃないよ。
 それに、謝る人は別にいるだろ?
 今、変わるから」

『あっ、はい……
 お願い致します』

御神提督は、携帯を話して僕に渡した。
僕は、無言で携帯を受け取る。

「はい、クロノ君。
 フェイト君からだ」

「あっ、はい。
 ありがとうございます。
 ……もしもし、フェイトか?」

『義兄さん?
 よかった、無事だったんだね……』

フェイトに義兄と言われると凄く照れる。
だけど、その声を聞いただけでも、自我を取り戻したと実感できた。

「ああ、おかげさまでね。
 それより、フェイトも吹っ切れたようだな。
 声を聞いただけでわかったよ」

『あっ、うん……
 ごめんなさい、義兄さん』

「いや、謝るのは僕の方だ。
 フェイトが抱えていた物を振り払う事が出来なかったんだから……」

『そんな事無いよ。
 義兄さんに義母さん、なのはにはやて……
 他にも出会った人がいて、自分が存在しているのに、全然気づかなかった私が悪かたのだから』

どうやら、フェイトは完全に過去の呪縛を断ち切ったようだ。
彼女から出てくる言葉でも、それは感じられる。
フェイトは構わず話してくる。

『それに、私ね……
 今まで自分だけが不幸な境遇だと思ってた……』

「……あんな体験したなら、誰だって思うよ?」

そう、P・T事件でのフェイトの境遇は、明らかに常識を逸していた。
そんな境遇を体験しているのなら、マイナス思考になっても仕方が無い。

『でもね、私以上に不幸な境遇で育った人がいることを知って……
 そして、私よりも強く生きていると知ったら、自分が情けなくなった』

「そうか……」

フェイトの様子だと、二度と自分を見失う事は無いと思った。
フェイトが明るくなった事には素直に嬉しいが、ただ、フェイトを癒す事が出来なかった自分に少し腹が立った。

『詳しい話は帰ってからするね。
 義兄さんも、回復したばかりなんだから無茶したら駄目だよ』

「むっ、君には言われたくない台詞だぞ」

『はいはい。
 じゃ、切るね』

そして、電話は切れた。
それにしても、フェイトは少し変わったのかなと思う。
僕は、携帯をたたみシャマルに返した。
御神提督は、僕の動作を確認し話してきた。

「ふむ、クロノ君。
 兄として、妹さんの回復はどうだ?」

「そうですね、自分を取り戻したのは良いことなんですけど……
 なんか、母さんに似そうで少し嫌な予感していたりします」

「あははははは。
 まぁ、でも……
 フェイト君は、君同様生真面目だからね。
 少しぐらいはいたずら心があってもいいと思うが?」

「少しだけなら、ですけどね……
 母さんみたく、羽目を外しすぎると厄介極まりないですから」

「まぁ、確かにな」

御神提督は母さんの素行を思い浮かべて苦笑していた。
僕は、心の中では御神提督も同類だと思っているが、口には出さない。
手痛いしっぺ返しが来るのは確実だから。
まぁ、でも……
フェイトが母さんみたいになる事は、ないと思いたい。
……はやてという存在が近くにいるから、なんとも言えないのが現実なんだが。
しかし、フェイトの件は良い方向で解決した。
なら、後はあのヴォルクルス絡みに関して考えなければならない。
不破恭也さんの処遇を含めても……

「御神提督……」

「何だ?」

御神提督は僕の表情を見て、真剣な目つきになる。
ここら辺が母さんとは違う所であり、僕が慕える理由の一つでもあった。

「恭也さん……
 不破恭也の処遇についてなんですけど……」

「君の意見は?」

僕は、彼の戦闘力を実際には把握していない。
なのははかなり信頼していたようだが、僕としては民間人を事件には巻き込みたくなかった。

「僕個人の意見としては、民間人を巻き込みたくはありません。
 それが、ある程度経験があったとしてもです」

「ふむ、なるほどな……
 ある意味、なのは君とは同意見か」

「えっ?」

以外だった。
なのはの事だから、あれだけ信頼しているからそのまま協力する事を進めると思ったのだが……
僕は驚いた表情を浮かべたら、御神提督は苦笑して話を続けた。

「ただ、なのは君の話には続きがあってな……」

「続きですか?」

「ああ、そうだ」

僕はなのはが導き出した結論に興味を持った。
確かに、教導官になってからのなのはは余程の事が無い限りは、重要な決断には私情を挟むことはない。

「なのは君の判断は、恭也は戦闘経験と技術に関しては既に教導隊隊員よりも上だそうだ」

「!!」

僕は御神提督の言葉に驚愕した。
管理局内で最強と言われる航空戦技教導隊……
恭也さんは、その隊員たちよりも上だとなのはは判断した。
なのはが教導官としてそう判断したとなると、明らかに僕たちよりも戦闘技術は上だと言う事。
御神提督は、驚愕している僕を無視し話を続ける。

「まぁ、あいつの戦闘能力に関して言えば、先の戦闘データと私との模擬戦を確認してもらえればわかる」

「……そうさせて頂きます」

なのはの判断が信じられなかった僕は、後で戦闘データを調べる事にした。
だが僕は、調べる内になのはの言葉は真実だと実感する事になる。
この時の僕は、まさか恭也さんが御神提督と殆ど互角に戦えるとは思っていなかった。
しかし、御神提督は話を続ける。

「だが、私もなのは君も恭也の協力を求めたのにはもう一つある」

「もう一つですか?」

僕の言葉に、御神提督は肯く。
そして、御神提督は驚くべき言葉を言った。

「恭也が使用しているデバイスには、風の精霊王(サイフィス)を宿している」

「!!」

まさか、こんな所で風の精霊王(サイフィス)が出てくるとは思わなかった。
そして、風の精霊王(サイフィス)はデバイスに宿していたとは……

「まぁ、詳しい話は、恭也たちが帰ってきてからだ」

「……わかりました」

「まっ、明後日に戻るように言ってあるから、それまでに戦闘データを見た上で今後の対策を練って置いてくれ。
 近々、黒幕が復活する可能性がある」

御神提督の指示に僕は了承しようとして、ふと疑問に思った。

「了解です……
 ところで、何故帰艦日が明日ではなく明後日なんですか?」

「ああ、先の戦闘で皆かなり疲労を蓄積していてな……
 まぁ、リフレッシュ休暇って奴だ」

「ああ、そういうことですか。
 了解です」

そういって御神提督は医務室を出て行った。
そういえば、この世界が御神提督の出身世界だとしたら、ご家族も健在のはず……
まぁ、御神提督の事だから、この事件が解決するまでは会うつもりはないんだろうけど……
そんなふうに思いながら僕は着替えを始める。
そして静かに時は流れていった。



恭也's View

俺がなのはと出会ってから既に13日が過ぎた。
その間、初日と3日前に量産型ヴォルクルスと戦闘を行い既に3機を撃墜している。
だが、フェイトやはやての話だと、俺の世界に後2機が転移してくる。
そして、量産型ヴォルクルスの転移は、ルオゾールが行なっているとシロとクロは言っている。
逆に言うと、俺の世界にルオゾールと呼ぶオリジナルヴォルクルスが眠っている事が判断出来た。
そういう訳で、俺は静馬叔父さんに協力するためにクラウディアに居る。

「今回、民間協力者として協力させて頂きます、不破恭也です。
 どうぞよろしく」

協力する事になった俺は、形式的な挨拶を行なったわけだ。
実際、静馬叔父さんに、なのは、フェイト、はやては初対面では無い。
そして、はやてを護る守護騎士たちも直接話したことはないが、知らないわけじゃない。
早い話、俺にとってはクロノ提督だけが初顔合わせになるわけだ。
まぁ、クロノ提督はなのはの家族の事を知っているみたいだから、俺の顔を見て驚くと思ったんだが……
それ以上に、俺の方が年下だった事に驚いていたようだ。

「なのは、嬉しそうだね」

「そういうフェイトちゃんこそ……」

「なんや、二人とも不謹慎やで」

「そういう、はやてちゃんはどうなの?」

「そうだよ。
 既に顔がにやけてるよ、はやて」

「おい、君たち……
 彼の参加の推薦は、そんな不謹慎な理由が本音か?」

なのは、フェイト、はやての態度に頭を抱えるクロノ提督。
当の当事者である俺は、三人の考えが分からないのだが……
そんな俺に対して、静馬叔父さんは何やら企んだ表情を浮かべて話してきた。

「モテモテだな、恭也」

「……何をどうとったら、そんな話になるんです?」

静馬叔父さんの言葉に、俺は呆れた。
まぁ、なのはに関しては好意かどうかは分からないが、明らかに俺を意識している事には気づいていた。
ただ、フェイトやはやてに関しては俺の姿をなのはの兄の姿と重ね合わせているだけだと俺は思う。
俺の言葉に静馬叔父さんは頭を抱えている。

「……本当に、士郎と正反対な性格に育っているんだな」

「まぁ、とーさんが反面教師だったのは事実ですけど……」

「だからと言って、ここまで朴念仁だとは思わなかったぞ」

そう言って、静馬叔父さんは盛大な溜息を付いた。
俺としては、何故そんな事を言われるのか思いつかないのだが……
そう考えてた俺だったが、不意にクロノ提督が俺の方に手を乗せて話してきた。

「恭也君、そうとう苦労しているようだね」

「……いつもの事ですから。
 そういう、クロノ提督も酷い目に遭ってきたようですね」

クロノ提督の言葉に、俺は苦笑して返答した。
俺の言葉に、クロノ提督は釣られて苦笑して話す。

「まぁ、いろいろとな……
 ところで、提督は止めてくれないかな。
 公式な場でなら兎も角、こういう場だとね」

「了解です、クロノさん」

何だか、クロノさんとは上手くやっていけそうな気がする。
俺は、そんな予感を感じた。
フェイト、はやてと言い合いしてたなのはだったが、不意にクロノさんに話してきた。

「それにしても、珍しいよね。
 クロノ君が、恭也君の参加をあっさり認めるなんて……
 私の時は、散々文句言っていたのに……」

なのはの質問に、クロノさんは苦笑して答えた。

「あの時のなのはは、戦闘に関しては素人丸出しだったじゃないか」

「それは……
 そうだけど……」

クロノさんの言葉に、なのはは不貞腐れた。
フェイトとはやては、そんななのはを見て苦笑している。
クロノさんは、なのはに構う事無く話を続けた。

「まぁ、恭也君がなのはの時と同じ状況なら、僕は反対している。
 だけど……」

「クロノ……
 だけど、何?」

クロノさんの意見は正論だ。
俺もクロノさんの立場なら、同じ判断をしているだろう。
だが、クロノさんの話には続きがあり、フェイトはその事が気になっていたようだった。

「……恭也君が、御神提督とまともに打ち合えるとは思わなかった。
 流石に、そこまでの実力がある人物であり、君たちの推薦だけでなく御神提督の推薦もあるのだから、無下に断るわけにはいかないだろ」

どうやら、クロノさんは俺と静馬さんの模擬戦のデータを調べていたようだ。
そして、その模擬戦を思い出したのか、はやては呆れるように話し出す。

「あの模擬戦はなぁ〜。
 もはや、人外バトルの領域やしなぁ」

「でも、あの動きは美由希さんも出来るんだよ」

「えっ、うそ!?
 あの、美由希さんが……
 全然そういう風には見えなかったんだけど……」

「……まぁ、普段のあいつは、優れた運動神経を無駄にするぐらいのおっちょこちょいだからな。
 そう思われても仕方が無い部分はあるが、なのはの言う事は事実だぞ」

「ほぇ〜。
 御神流を使える人は、みんな人外確定なんやな」

美由希も俺たちと同じような動きが出来ると聞いたフェイトは、驚いていた。
まぁ、普段の美由希しか知らなければ、誰だって驚くので俺は苦笑してた。
ただ、はやての言葉には少々引っかかった。

「ふむ……
 どうやらはやては、マッサージをご要望のようだな」

「きょっ、恭也さん!?
 まっ、マジで、それだけは勘弁や。
 頼むから、勘弁してや〜」

俺の言葉に恐怖感を抱いて、顔を真っ青に染めるはやて。
そして俺に、はやては必死になってあやまる。
まぁ、先日くだらない事をのたまわってくれたので、お仕置きをしてやっただけなのだが……
ここまで効果覿面だとは思わなかった。

《ふむ、牽制としては十分な効果だったな》

《あははははは……
 何も知らなかったはやてちゃんは、なのはちゃんの忠告を忘れて嬉々として受けてたもんね》

《ああ、そうだな。
 それにかーさんと同類だと感じたからな、先手を打ったまでだ》

俺となのはは念話で話していた。
まぁ、俺となのはははやての被害者になりかけてたからな。
フェイトは、はやての表情を見て苦笑している。
はやてと違ってフェイトは生真面目だからそういう冗談は言わないと思う。
この光景を見ていたクロノさんは、呆れて話し出した。

「そろそろ、本題に入りたいのだが?」

クロノさんの一言にその場に居る全員が、今までと違い真面目な表情を浮かべる。
そう、先の戦いで現れた黒幕……
ルオゾールについて話す為に、俺たちはこの場に集まっていた。

「さてと……
 では、恭也君。
 頼む」

「了解です、クロノさん。
 シロ、クロ、頼む」

「わかったにゃ」

「了解にゃんだにゃ」

みんなはシロとクロの話を黙って聞く。

「元々、ヴォルクルスは『ラ・ギアス』と呼ばれる世界で信仰されていた神にょ一つにゃんだにゃ」

「ラ・ギアス……
 どこかで聞いた事あるんやけど……
 クロノ君は知っているんか?」

「いや、初めて聞くなだ」

シロが言ったラ・ギアスについて、はやては何処かで聞いた事がるようだった。
クロノさん、フェイトは初めて聞く名で困惑している。
そして、クロがシロの話に続いて話し出した。

「『ラ・ギアス』と言うにょは、今にょミッドチルダを含んだ次元世界にょ遥か昔にょ名前にゃ」

その言葉に、静馬叔父さんと俺となのはを除いて驚愕していた。
まぁ、俺となのははある程度聞いてた事もあり驚く事はないが。

「ついでに言うとにゃ、全てにょ魔法にょ起源はラ・ギアスに集約するにゃ」

「じゃっ、じゃあ……
 ミッド式もベルカ式も、根源は同じ物だったの?」

「そういうことにゃんだにゃ。
 恭也がミッド式にょ適応が高いにょに、能力強化にょ魔法を使えるにょはこにょためにゃんだにゃ」

「そういえば……
 恭也君の魔法陣の二重円の中に描かれるのは、私たちみたいな正四角形二つじゃなくてはやてちゃんたちと同じベルカ式の正三角形二つを上下反転させて重ね合わせた六芒星だったね」

「おい、シロにクロ。
 話が横道にずれてるぞ……」

確かに魔法の話に関しては、俺も気になるのは事実だ。
だが、今は魔法の話よりも重要な事を聞かなければならない。

「話を戻すにゃ。
 それで、ヴォルクルスが司るのは『破壊』にゃんだにゃ」

「そして、ヴォルクルスを信仰している宗教が存在してたんだにゃ。
 それで、ある国と結託して機体を製造したんだにゃ」

「その当時は、ラ・ギアス全体で戦争状態だったんだにゃ……
 裏で、ルオゾールが暗躍してたんだけどにゃ。
 それで、ルオゾールと結託した国に対しては、表向き軍事兵器として製造に協力したんだにゃ。
 本当にょ目的は、ラ・ギアスを含む全てにょ世界にょ破壊だったんだけどにゃ」

「何も知らにゃいで利用されていた国は、そにょ機体が完成した直後にルオゾール一派に奪取されそにゃまま滅ぼされたにゃ」

「……滅ぼされた国は自業自得やな」

「だが、厄介な代物を残してくれた」

何も知らないで利用だけされて潰れた国は自業自得なのだが……
だが、その中には何も知らない人たちもいた訳だ。
そんな風に、俺は考えてしまった。
しかし、俺たちには感傷に浸る余裕は無い。
なぜなら、ヴォルクルスは今でも存在しているからだ。

「シロ、クロ。
 その後の話は?」

フェイトの言葉に、シロとクロは話を続ける。

「ルオゾールを含むヴォルクルスと契約した強大にゃ魔力を持った神官たちは、そにょ機体と融合したんだにゃ。
 そして、恭也たちも戦った量産型と言うにょは、こいつらが自らにょ魔力を使用して作った分身にゃんだにゃ」

「だけど、流石に思考パターンまではコピーできにゃかったんで、本能にょまま行動するようににゃってるにゃ。
 もっとも、それがヴォルクルスにょ本質にゃんだが」

「だから、あたり一面を攻撃してたわけだね。
 それで、途中で転移しようとしたのは?」

「にゃのはとはやてには、こにょ前はにゃしたけどにゃ。
 それはルオゾールが、データ収集目的にょ為に呼び寄せたからにゃんだにゃ」

「つまり、ルオゾールが呼び寄せなかったら……
 あのまま破壊活動が続いていたんやな」

「そうにゃるにゃ〜」

はやての言葉にクロは肯定する。
フェイトは、多少困惑しながらシロとクロに質問した。

「だけど……
 量産型だったとは言え、転移しなければ私たちだけで破壊できたと思う……
 だったら何故、オリジナルを倒すのに精霊王の力が必要なの?」

確かに、フェイトの意見はもっともだ。
俺は、偶然サイフィスに選ばれただけである。
流石になのは一人で勝てるかと言えば、何も知らなかった場合はきついと思うが……
実際、先の戦いではなのは一人で対等に戦えていたのも事実だった。
だが、シロとクロはフェイトの意見を否定した。

「オリジナル・ヴォルクルスには特殊にゃフィールドが存在するんだにゃ」

「特殊なフィールド?」

シロの言葉に疑問を浮かべるフェイト。
クロは、シロの言葉に続けて話す。

「『アストラルシフト』」

「!!」

クロの言葉に驚愕したはやて。
クロノさんとフェイトは、はやての様子に疑問を浮かべる。
静馬叔父さんは、黙って静かに聞いている。
そして、はやては恐る恐る話し出した。

「まっ、まさか……
 絶対防御フィールドを備えておるんか!?」

「どうしたの、はやて……
 その、絶対防御フィールドって何?」

疑問に思ったフェイトははやてに質問していたが、はやては呆然として答えられなかった。
そして、代わりに答えたのはなのはだった。

「フェイトちゃん……
 その、アストラルシフトって言うのは、普通の攻撃じゃダメージを与えられないフィールドなの」

「えっ?
 AMFとは違うの?」

「AMFの場合は、物理攻撃は通るでしょ。
 だけど、アストラルシフトの場合……
 目で見えてるのは幻影で、実態は別の空間に存在するんだ」

「!!
 そっ、そんな……」

「……まさか、そんなものが実在してたとは」

なのはの言葉に、真相を知ったフェイトも絶句。
クロノさんもまた、呆然として呟いていた。
話を聞くだけだった静馬叔父さんは、初めて口を開いた。

「だが、それで納得がいく。
 三提督が手も足も出なかったのは、そのアストラルシフトによる影響なんだな」

「そうにゃんだにゃ。
 それで、精神領域に干渉できる四大精霊王と契約して、デバイスに憑依させたわけにゃんだにゃ」

「もっとも、今までにょ戦いでサイフィス以外にょデバイスは破損し失われてしまったにゃ」

「じゃっ、じゃあ……
 恭也さん以外じゃ、オリジナルヴォルクルスは破壊出来ないってことなの?」

フェイトは呆然として、質問した。
確かに、今までの話をまとめると、俺以外にオリジナルヴォルクルスへはダメージを与えられない。
だが、シロとクロはそのまま話を続ける。

「アストラルコーディングを組み込んだ一撃で精神領域から引きずり出せば一般人でもダメージを与えられるにゃ。
 再びアストラルシフトを張るには、それなりにょ時間はかかるからにゃ」

「正し、現時点でアストラルコーディングを組めるにょはあたしたちだけにゃ。
 時間に余裕があるにゃら、にゃのは、フェイト、はやてのデバイスに精神領域干渉術式を組み込む事は可能にゃんだけど……」

「組み込むにしても容量は膨大だし、それぞれにょデバイスにあわせないといけにゃいしにゃ。
 調整だけで一日二日はかかるにゃ」

どうやら、なのはたちでもオリジナルに対抗できる手段はあるようだ。
だが、それを組み込むには時間が足りないのも事実。
その話を聞いたフェイトが、何かに気づきシロとクロに質問する。

「クロノのデバイスは無理なの?」

「クロにょのデバイスは二つとも無理にゃんだにゃ」

「ストレージデバイスは操作を簡略化しているために、新たな術式を組み込む事が無理にゃんだにゃ。
 アストラルコーディング専用に作るなら可能にゃんだけど……」

「……そういえば、デュランダルも凍結専用だったね」

「新たにストレージデバイスを作るとなると、一日二日で出来る代物ではないぞ。
 現時点では無理な提案だな」

シロとクロの説明にフェイトは納得する。
どうもクロノさんのデバイスは、なのはとフェイトが使っているインテリジェントデバイスとは仕組みが違うようだ。
はやてのデバイスは、どうやら俺のと似ているみたいだが……
どちらにしろ、現状ではシロとクロによって組んだアストラルコーディングを俺がオリジナルに与えなければならないようだ。

「つまり、俺がオリジナルヴォルクルスにその術式を組み込んだ一撃を入れないことには始まらないんだな?」

「その後は、再び張られるまでの時間勝負になるわけだね」

「サイフィスの力によって精神領域に干渉できる恭也以外だと、そういうことににゃるにゃ」

俺となのはの意見に、シロは肯定する。
だが、クロは俺たちに忠告する。

「だけど、今回にょ相手はルオゾールにゃんだ。
 奴にょ事だから、隠し玉を持っていると考えた方がいいにゃ」

「ああ、そうだな……」

俺は、初めて相対したルオゾールを思い出していた。
人を見くびり、嘲笑い、そして逆撫でする奴は、その裏で何をしでかすかわ分からない。
実際、クロノさんやフェイトはそれで大ダメージを負った。
そんな風に考えていた俺だったが、急に艦全体が警報で支配された。
そして、静馬叔父さんに緊急通信が入る。

『御神提督!
 ポイント1100に巨大な魔力反応あり!
 上空には、先の戦闘と同一と思われる魔法陣が展開され、さらに海中からも魔法陣が展開されています!!』

「状況は了解した。
 引き続き監視を頼む」

『了解です』

管制室からの緊急通信を切った静馬叔父さんは、俺たちに指示をだした。

「クロノ君、君は恭也たちを連れて現地に向かってくれ!
 それと、今回は守護騎士たちは待機だ」

静馬叔父さんの言葉に、はやては納得する。
前回、シグナムとヴィータはルオゾールによって洗脳されていた事もあり、今回も可能性として存在する。

「そうですなぁ。
 今回ばかりは、あたしの子達を出すわけにはいかん……
 再び操られる可能性があるからな」

「……戦力的には辛くなるけど、しょうがないね」

フェイトも事情を知っている為、納得している。
その表情を見る限り、内心では思うこともあるのだろうが……

「うん、それに前の戦いは上手く成功したけど、今後上手くいくかは分からないし……」

「恭也さんのあの魔法は、魔力の消費が半端じゃないからなぁ〜。
 流石に頼るわけにはいかんから……
 あの子達にはあたしから言っとくわ」

なのはの言うとおり、前回の戦いは救出する事に成功した。
だが、あの時使用した魔法・サイフラッシュの消費は半端じゃない。
ある程度魔力の消費を調整できるとは言え、撃ち合いになったら圧倒的に俺の方が不利になる。
だから、余計なリスクは避けるべきだと判断した。

「……守護騎士たちの気持ちは分からんでもないが、現状リスクは少なくしとくべきだと俺は考える」

「ヴィータちゃんは納得しないと思うけどね」

「……シグナムもだよ。
 はやての言う事は聞くと思うけど、内心は悔しさでいっぱいだろうね……」

「それを宥めるのがあたしの仕事や。
 みんなは心配せいへんでええよ」

なのはやフェイトが言うとおり、シグナムやヴィータは静馬叔父さんの今回の命令は内心納得できないだろう。
特に、シグナムに関しては同じ武人でもあるので気持ちは分かってしまう。
だが、感情だけで行動すれば問題が起きるのも事実。
だから、ここは守護騎士たちの主であるはやてに説得を任せることにした。

「話はまとまったようだな。
 では行くぞ、みんな!」

クロノさんの言葉に、俺たちは無言で肯きクラウディアから出撃した。
その場所は、海鳴臨海公園より東、あたり一面が海上に面した場所。
そして、俺たちがついた時には、俺となのはが相対した合体バージョンの量産型と……
その量産型よりも禍々しい……
いや、恐怖・絶望と言った負の感情を支配したような魔力を帯びた存在が姿を現した。

『おや、皆さん。
 おそろいですなぁ』

その恐ろしいまでの姿とは裏腹に、とぼけた口調で話し出すルオゾール。
そして、ルオゾールは宣言した。

『くっくっくっくっく……
 では、始めましょう。
 この世に存在する全てに破壊を……
 そして、滅びの祝福を与えましょう!!』

その宣言と同時に、大量の魔法生物が一斉に出現した。
こうして、俺たちとルオゾールとの最終決戦の火蓋が切って落とされる。
俺はなのはと出会ってから、関わった事件が収束するのを感じていた。

to be continued




後書き

どうも、猫神TOMです。
ようやく10話です。
残り後3話……
本当はもう少し日常編をやろうと思ったのですが、流石に長くなるのでオミット。
そこらへんは横道シリーズのネタにしておきます。

それと、ようやく恭也君の魔法の資質が判明。
ここでの設定では、ミッドチルダ式とベルカ式の大元は一緒って事にしています。
ということで、ミッド式に似ているのに恭也君の得意魔法は能力強化系な訳です。
まぁ、本編でも述べているとおり闘気のイメージがしやすかったってのもありますが。

ちなみに、なのは、フェイト、はやてが静馬叔父さんに対してそれぞれ呼び方を変えてます。
ここら辺は、静馬叔父さんが堅苦しいのは苦手って言う事で(爆)
まぁ、フェイトもはやても初対面からそれなりに立っていますので。

さてと、恭也、なのは、クロノ、フェイト、はやてがようやく勢ぞろい。
これから、終息に向かっていきます。
では、また。



遂に姿を現した。
美姫 「ラスボスの登場ね」
一体、どんな結末が!?
美姫 「ああー、とっても続きが気になるわ〜」
いやいや、本当に。早く続きが読みたいです。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
待ってます!



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